【役職定年と早期退職制度】50代で転職する人のシビアな現実(40代も他人事ではない)

20代や30代の方が「50代で転職する」と聞くと、ずいぶんと奇妙なことと受け取られるかもしれません。

「50歳代にもなって、なんで、今さら転職するわけ?」

「そもそも、50代で転職するって言ったって、雇ってくれるところなんかあるの?」

きっと、こんな疑問を持たれることでしょう。

 

でも、現実的には「50代で転職する人」は、相当数います。

その理由は、

「転職したくて転職する」

のではなく、

「会社にいられなくなったので、しかたなく転職せざるをえない」

という、とてもシビアなもの。

 

そして、残念ながら40代の方々にとって、これは他人事ではない現実となりつつあります。

その理由は

  • 役職定年制度
  • 早期退職制度

という「姥捨て山」のような2つの制度が当たり前になりつつあるからなのです。

 

こちらでは、役職定年制度と早期退職制度のホンネの部分を明らかにしていきたいと思います。



50代で転職する理由

定年年齢を65歳まで引き伸ばそうかという時代ではありますが、現実的には50代で会社から退職せざるをえないという人は、相当数います。

というのも、比較的社員数が多い会社では、

  • 役職定年制度
  • 早期退職優遇制度

という制度を導入していて、50代の社員を会社から放り出そうとしているからなんです。

役職定年制度

役職定年制度とは、文字通り、役職者はそのポストを外れる年齢が定められている制度です。

例えば、課長職で52歳、部長職で55歳というように、役職によって上限年齢が決められている場合もあれば、管理職は一律55歳までに役職から外れるといった場合もあります。

いずれのケースも、それまでの実績や年齢に関係なく、強制的に役職から外されてしまうという制度です。

 

早期退職優遇制度

早期退職優遇制度も文字通り、法律で定められている定年(60歳)前に退職する人には、

  • 退職金を上積みする
  • 特別休暇を与える
  • 再就職先斡旋会社を紹介する

などの好条件(優遇措置)を提示し、「早く辞めてね」と早期退職を促す制度です。

 

なぜ、こんな制度があるのか

役職定年制度が導入される理由には、「人事上の新陳代謝を促進したい」という思惑があります。

IT化や効率化などで社員数を減らしている会社が多く、それに伴ってポスト数も減っています。

 

数少ないポストに年配の社員が居座り続けると、若手社員にはなかなか昇進のチャンスが回ってきません。

すると、仕事に対するモチベーションが低下し、転職してしまう人が出てきます。

優秀であればあるほど、「ばからしくてやってられっか」と思って当然ですよね。

そこで、ある程度の期間、役職を勤めた人には「後進に道を譲る」意味で、強制的に役職から外し、若手を据えるということが行われているのです。

 

これらの人は、役職からは外れるけれど、定年までの間は社員として会社に残ります。

言葉は悪いですが「窓際族」のような扱いとなり、先日まで部下だった後輩社員の部下として仕事をするのは当たり前で、「あてがい扶持の庶務・雑務」を担当するのが一般的です。

給料は下げられ、仕事は閑職に追いやられ、かつて自分が命令していた後輩が上司として命令してくる・・・。

役職定年となった当の本人は、「会社の制度だから仕方ない」と表面的には納得しつつも、腹の中は「おもしろくない」わけです。

 

一方、若手社員にとっても、かつての上司が部下になったら、やりにくいこと多々あるでしょう。

実際に仕事をやらせても、まともに出来ない人もいっぱいいるでしょうし。

そして、何より「一丁上がり」のおじさん・おばさんに、同じ職場でチンタラされるのは、精神衛生上、よろしくありません。

そこで、「早期退職優遇制度」があるわけです。

 

このように会社に残っても先に良いことが何一つない人(=会社にとっては、辞めてもらいたい人)が、早めに退職するように背中を押してあげるのが「早期退職優遇制度」なのです。

好条件で退職を促すことで、お役御免となったロートル社員は早めに第二の人生に入るきっかけを得られ、会社としてはお荷物人材が減った分だけ身軽になり、人事の回しを良くして社内活性化ができる、ということです。

 

また、この「早期退職優遇制度」は、一定年齢以上の社員を対象とする場合が多いので、元役職者だけではなく一般の社員も対象となり、高齢者の数を減らすことができるのです。



早期退職優遇制度の運用

日本の労働に関する法律では、解雇はもちろん、指名での退職勧奨にも、とても厳しい制限があります。

なので、

「早期退職優遇制度は強制されるものでなく、これに応募するかどうかは、本人の判断」

によって決められるというのが建前です。

 

でも現実は、その年齢・立場になったら「応募せざるをえない」会社もザラにあるのです。

運用上は、本人が応募してきた形を取るものの、実質的には60歳より前に定年となる、ということです。

もっとも「応募せざるをえない」会社では、早期退職の条件を「納得がいく」くらいに良くしています。

 

私が長く勤めた会社は、「管理職は年度年齢55歳の年度末に退職する」ルールがありました。

もちろん、建前上は強制ではありませんでしたが、実態として「拒否権」はなかったです。

そもそも、管理職に任用される前に

「55歳の年度末に退職してもらうけど、大丈夫だよね?」

と念押しされ、その際に断ったら管理職に任用されないというきまりでしたので。

 

早期退職者の選ぶ道

このように定年を前にして会社を早期退職した人は、大きく分けて2つに分かれます。

ひとつは、アーリーリタイアメントする人。

この人たちの多くは、いろいろな面で「恵まれた人」であり、働く必要がなくて、やりたいことがある人と言えるでしょう。

(もちろん、介護等で働きたくても働けない事情を持つ人もいるでしょうが・・・)

そして、もうひとつが、次の働き口を探す人。

「50代で転職する人」は、ここに当てはまります。

 

50代でも働く理由

働き口を探す理由は、第一は経済的な問題。

年金がもらえるまで10年前後の期間がある中、そこまで食いつなげるだけの余裕がある人は少ないでしょうし、もし、その余裕があっても働ける間は働きたいと考えるのは、至極、当たり前のことですよね。

 

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第二は、やることが見出せないということ。

経済的に余裕はあっても、これと言ってやりたいことがない人は、言わば健康と時間つぶしのために働く、ということがあるのです。

50代の働き方

一方、働き方は、どこかに勤めることが多いと思います。

30年以上、勤め人として過ごしてきた人が、自分で事業を立ち上げるのは、なかなか困難ですし、年齢的に、もし失敗したら取り返しがつかなくなるのは分かっていますので、起業に踏み切る人は少ないことでしょう。

(中には早期退職を見越して、現役中から周到に準備をしている人もいますが)

なので、どこかの会社や組織に所属して、そこで働きたいという人が多く、50代でも転職(再就職)する人がいる、ということなのです。



40代の人も他人事ではない?

以上、「50代で転職する人」について記しました。

会社の制度として、50代の社員を半ば強制的に退職させている事実が、「50代で転職する人」を生み出す理由なわけです。

20代・30代の人は、この制度による退職は、まだあまり考えなくても良いのでしょうけど、40代の人は、意識しておかれたほうが良いと思います。

 

時間が経つのはあっという間、特に勤め人としての40代は、20代・30代に比べて圧倒的に速いので、気がつくと50代になっているものです。

また、早期退職の対象が急に40代まで下げられる可能性もあれば、「この制度は会社にないから関係ない」と思っていても(バブル入社組が50代になってきた今や)、いつ導入されるかわかりませんので。

40代の人にとっては、他人事ではない、ということです。

 

おわりに

説教臭くなって申し訳ありませんが、「ひとつの会社で勤め上げる」ことが、なかなか難しいという現実がある中、自分がどうしていくかは、早めに考え始めたほうが良いと言えるでしょう。

環境も変われば、考えも変わるし、自分の思う通りに物事は進まないものですので、先々を考えたところで仕方がないかもしれません。

不確定要素が多いことを考えるのって、疲れますしね。

でも、何かの折に少しずつでも考えて準備しておくと、50代になって「どうしよう?」と慌てることが少なくなるでしょうから。

 

 

では、また。